令和7年11月度
兄 弟 抄
(御書九八一㌻一五行目~九八二㌻一行目)
我が身は過去に謗法の者なりける事疑ひ給ふことなかれ。此を疑って現世の軽苦忍びがたくて、慈父のせめに随ひて存の外に法華経をすつるよしあるならば、我が身地獄に堕つるのみならず、悲母も慈父も大阿鼻地獄に堕ちてともにかなしまん事疑ひなかるべし。大道心と申すはこれなり。各々随分に法華経を信ぜられつるゆへに過去の重罪をせめいだし給ひて候。
【通釈】
我が身は過去世に謗法の者であったのだということを決して疑ってはならない。これを疑って、現世の軽い苦しみを堪え忍ぶことができずに、慈父の責めに随って意に反して法華経を捨てるようなことがあるならば、自分自身が地獄に堕ちるだけではなく、悲母も慈父も大阿鼻地獄に堕ちて共に悲しむことになるのは、疑いのないことである。大道心というのは、まさにこのことである。それぞれが大いに法華経を信じてきた故に、過去世の謗法の重罪を責め出して(今世に軽い苦しみとして受けて)いるのである。
【主な語句の解説】
〇慈父・悲母
子を慈しむ父と慈悲深い母のこと。慈悲とは抜苦与楽の義で、『大智度論』では、苦を取り除くを悲、楽を与えるを慈とする。
〇大阿鼻地獄
無間地獄のこと。八大地獄(八熱地獄)の最下層にあり、五逆罪(殺父・殺母・殺阿羅漢・出仏身血・破和合僧)や誹謗正法という、仏法上最も重い罪を犯した者が堕ちる地獄。
〇大道心
大いなる道心。道心とは仏道を求め精進する心のこと。ここでは不退転の信心を指す。

