令和5年2月度
持 妙 法 華 問 答 抄
(御書二九六㌻一行目~三行目)
只須く汝仏にならんと思はゞ、慢のはたほこをたをし、忿りの杖をすてゝ偏に一乗に帰すべし。名聞名利は今生のかざり、我慢偏執は後生のほだしなり。嗚呼、恥づべし恥づべし、恐るべし恐るべし。
いをもまいぬべし。舎利弗にあらねども、立ちてをどりぬべし。上行菩薩の大地よりいで給ひしには、をどりてこそいで給ひしか。普賢菩薩の来たるには、大地を六種にうごかせり。
通釈
あなたが仏になろうと思うならば、慢心のはたほこを倒し、忿りの杖を捨ててひとえに一仏乗(法華経)に帰依すべきである。名聞名利は今生のみの飾りであり、我慢や偏執は後生の手かせ足かせでしかない。ああ恥ずべきであり、恐るべきである。
【主な語句の解説】
○慢のはたほこ(幢)
幢とは、上部に小旗をつけた鉾のこと。ここでは権教の者が、自ら悟りを得たと驕り高ぶる心(慢心)が高くそびえるさまを幢に譬える。
○忿りの杖
権教に執着する者が、法華経の行者による折伏を受けて生じる怒りの激しさを、相手を打ちたたく杖に譬えたもの。
○一乗
衆生を仏の境界に導く唯一の教えのこと。
○名聞名利
名誉と私利。また、それらを貪る欲望のこと。
○我慢
煩悩の一つで、強い自我意識から起こる慢心のこと。また、自己中心に物事を捉え他人を軽んずること。
○偏執
偏った見解に執着して他人の意見を受け付けないこと。
○ほだし
鎖やかせ(枷)など、手足にかけて自由に動けないようにするもの。転じて、人の身心を束縛し、行動の妨げとなるもの。